2021/01/132023/01/20なるには

ユースと高校(街クラブ)どちらに進学するべきか|それぞれの特徴を解説

元プロ選手など様々なサッカー関係者に取材を行い、そこで知り得たユースと高校のそれぞれの特徴、メリットとデメリットを一覧掲載しています。

現実としてはまずはユースを第一希望として選択し、叶わなかった場合に高校や街クラブを選択するケースがほとんどです。

ほぼすべての中学年代選手がそのような考え方を持っているといっても過言ではありませんが、ユースに入れたとしても実際にはなかなか厳しい現実が待っている事実も判明しました。

まずはそれぞれの特徴を確認して、あなたの進路を検討してください。

 

プロになりやすいのはユース・高体連?

サッカーのプロ選手になりやすい選択肢はどちらなのか?

本人はもとより、子供を持つ親御さんも思い違いをしているケースが多いのですが、プロになりやすいのはユース以外の進路になります。

どうしてユース以外の方がプロになりやすいのか

どうしてユース以外の方がプロになりやすいのか?

答えは単純でユースにはトップチーム以外の選択肢がほとんど無く、高体連などのチームにはJリーグチームはもとより、海外のチーム、地域リーグまでの選択肢が存在するためです。

同じ実力なら、ユースと高体連では圧倒的に高体連の方がプロになれる可能性は高くなります。

高体連チームに編入進学する選手も

枠が狭い「ユースではプロになれない」と判断してJユースを退団、高校のサッカー部に編入してプロになる、プロを目指す選手もいます。

「東京Vユース出身の武眞大が挑んだ最初で最後の選手権。予選後にスタメン落ちも後悔がなかった理由」
https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=52791

興國高から今年3人目のJ内定!C大阪U-18から転籍、努力続けた快足MF向井颯が福島入り勝ち取る
https://web.gekisaka.jp/news/detail/?342017-342017-fl

ユースのメリット

良い選手であれば絶対にプロになれる

Jユースの最大のメリットは、一定以上のレベルであれば絶対にプロになれるということです。

常にコーチ陣が成長を見定めているため見落とされる心配がなく、努力が実れば必ずプロになることができます。

これが最大にして最高のメリットといえます。

プロのレベルが実感できる

隣のグランドでトップチームが練習していたり、トップチームとの練習試合・練習参加を通じてプロのレベルを直接実感することができます。

「どのくらいのレベルになれば自分がプロになれるのか」を明確に知ることができるメリットは計り知れません。

◆プロの選手のキックの質
◆フィジカルの強さ
◆プレー強度
◆生活態度

身近な手本が存在することで努力の方向性を間違えることなく、最短距離でプロを目指しやすくなります。

6年間の育成

Jアカデミーではジュニアユース、ユースを合計した6年間での選手育成を基本としています。※近年は小学生年代も力を入れてきている。

選手の性格やプレースタイル、成長期の成長度合いなど長期的な視野での育成が可能になり、「飛び級が可能になる」など選手・コーチともにメリットの多い育成方式です。

最近では青森山田高校昌平高校など高体連チームも付属の中学校と連携して6年単位での育成に力を入れています。

付属中学がない強豪高校も地域の街クラブと連携するなど中高一貫校に近い制度を導入しています。

あらゆる環境が優れている

J1チームのコーチ陣は全て元プロ選手・プロ契約であり、技術・戦術に関する的確なアドバイスが期待できます。

サッカーに関すること以外でもフィジカルや怪我・リハビリの専門家、天然芝のグラウンド、練習後すぐの食事提供など、プロ並みの環境が用意されています。

柏レイソルユースの食堂
町田ゼルビアの食事改革

最近は類似環境を準備する強豪高校も増加していますが、資金が豊富なアカデミーの水準には遠く及びません。

アカデミーの環境◆アカデミー専属のプロコーチ
◆フィジカルコーチ
◆心理士などメンタルの専門家
◆ドクター・理学療法士
◆芝生のグラウンド
◆ウエイトトレーニング施設
◆専属の栄養士が提供する食事 など

全員がプロを目指している

アカデミーの選手は全員がトップチームのプロを目指して練習しています。

周囲には優秀な人材しか存在しないため、必然的に全員が切磋琢磨し成長することができます。

また、コーチ陣も「プロになる」事を最大限に尊重し、サポートに尽力してくれます。

金銭面の負担が少ない

遠征費やユニフォームなどの費用は概ねチームが負担します。

どの程度までの負担があるのかはチーム次第ですが、高体連などと比較すると親御さんの負担は確実に軽くなります。

ユースのデメリット

ユースのデメリットを紹介します。

どんなに豊作の年代でもプロ契約を結べるのは年に1人か2人

トップチームで受け入れられる選手の人数には制限があり、かなりのレベルに達していたとしても全員と契約することはありません。

もちろん全員がプロレベルにあるユースチームなど存在しませんが、ユースから昇格するにはチーム内の序列で1位か2位、最低でも3位には入っていないと契約できない可能性が高くなります。

また、一定の基準に達していないと判断されればユースからの昇格が0人になる年代もあります。

つまり、同期でのトップ争いの勝利が絶対条件で負けてしまえば高卒時にプロになる夢は絶たれることになります。

現状ではJユースから他のJリーグクラブでのプロ契約は難しい

現状ではJユースから他のJリーグクラブでのプロ契約はご法度に近い形であり、他のチームならプロ水準の評価がある選手でもプロになれない可能性があります。

【例】
「FC東京ユース」に所属している選手が高校卒で他のプロトップチーム「浦和レッズ」に入団することは難しい。
※不可能ではないが紳士協定として、Jリーグトップチームは他チームのユースには声をかけないようになっている。

「FC東京ユース」で育ててきてもらったのに、いきなり「浦和レッズ」に入団することは心情的にも難しく、育成費用の問題も発生してきます。

また、自由にJクラブが他チームのユース選手に声をかけられるようになると、資金力のあるチームに選手が流れてしまう事になり、本人や現場が混乱してしまいます。

そういう意味から他のトップチームからはユースチームには声をかけない決まりになっています。

まれに他のチームと契約することもありますが、可能性はほぼ0と考えて良いでしょう。
ただ、この制度には問題(選手の可能性を潰している)が多いと改善を促す動きもあります。

結論としては、所属ユースチームのトップチームでプロになれなかった場合は大学進学しか可能性がほぼなくなります。

下位で入団した選手がプロになれるケースは少ない

ユースには有力選手に対してのスカウト入団とそれ以外の入団方法が存在します。

有力選手は「ジュニアユースから引き上げる」か「他チームからスカウト」の形で入団が決まりますが、その他の選手はセレクションで入団が決められるのが通常です。

方法自体には何の問題もありませんが、セレクションで受かるような低い序列でユースに滑り込んだ場合、選手としては成長していくものの、高卒でプロになれる選手はほぼいません。

なぜ、下位で入団した選手はプロに上がれないのか?

ユースでプロになるには、チーム内のトップ選手になる必要があります。

上位2位までがプロ入りの目安だとします。
仮に15人の同期がいた場合、実力下位で入団すると下から10人以上を差し置いて這い上がらなくてはなりません。

・同期のライバルたちと同じ練習を行う。
・序列下位の選手は主力としてコンスタントに試合に出場できない。

同じ練習をして、なおかつ試合の出場機会も制限されることからチーム内での序列逆転が発生しにくい環境になっています。

あたりまえの話ですが、ユースから高卒でプロに昇格する選手は入団時から序列上位の選手がほとんどです。

ユースに昇格できずに高体連など他チーム経由でプロ入りを果たした選手は数多く存在します。

しかしながら、ユース入団時に序列下位の選手が新卒でプロになるのはかなりのレアケースといえます。

プロを目指す選手にはあまり知られていない事実といえます。
今一度、自身でサッカー選手の経歴やインタビューを調べて確認してみてください。

元サッカー選手

今はユースに入ることを目指す選手が多いですが、ユースの下位なら他チームの主力になった方がプロへの近道になるかもしれません。
試合にレギュラーとしてコンスタントに出場できていない選手がプロになることはありません。
イケイケだった日本人選手が海外に移籍して試合に出場できずに帰国。
帰国したものの、かつての輝きが失われているケースを見たことがあると思います。それに近いものがあります。

トップチームの色がつく

ユースはトップチームの育成機関であり、「トップチームで如何に活躍できるか」に主眼が置かれて育成が行われます。

トップチームがパスサッカーならテクニカルな選手を、勝負強いチームなら球際に強い選手を、というようにトップチームの意向に相応しい選手を育てようとします。

実際にガンバ大阪ユースや川崎フロンターレユース、FC東京ユース、鹿島アントラーズユースなどはトップチームのカラーを色濃く受け継いでいます。

育成機関である以上は自然な傾向といえますが、育成年代からトップチームの「色」を意識することで選手の個性が薄まり、小さくまとまってしまったり、特定のチームでしか活躍できない選手が増えていると指摘する指導者もいます。

バルセロナと類似

同様の現象は世界のトップチーム「FCバルセロナ」でも見られ、FCバルセロナ出身選手がバルセロナから移籍した後、他のリーグでもバルセロナ時代のように活躍できているケースは多くありません。

バルセロナは育成年代から強烈に「パスサッカー」を追求しているチームであり、テクニカルな選手の育成は特筆すべきものがあります。

ただ、極度に特化されている分、他チームでも通用する汎用的な能力が養成されにくい傾向にあるようです。

高校サッカーのメリット

選手権が存在する

高校サッカー年代の最大イベント「全国高校サッカー選手権」は高校のサッカーチームしか出場できません。

Jユースへの昇格が決まっていても「国立競技場」に立ちたいからと高校のチームを選択する選手もいます。

プロへの選択肢が多い

Jリーグのプロチームから地域リーグ、海外のリーグまで、高校卒業時にプロになれる選択肢は無数に存在します。
※Jユースは基本的に自身のトップチームのみ

伊藤翔選手や宮市亮選手は、高校卒業と同時に海外のクラブと契約を交わし海外で活躍しました。

個性が成長しやすい

常にプロを目指してしのぎを削るユースとは異なり、自由度の高い環境が高校サッカーには存在しています。

自由度が高いだけに、個性豊かな選手が育ちやすい土壌があります。

強烈な個を生み出す土壌

高校チームは強豪校といえども選手のレベルがバラバラで、ユースと比較するとチームとして劣勢に立たされる事が多くあります。

そのような中でプロになる選手は「メンタルや個の力に秀でた選手が多い」といわれています。

海外で活躍する本田圭佑選手や鎌田大地選手、大迫勇也選手などがその良い例です。

長くガンバ大阪アカデミーの監督を努め、宇佐美貴史選手や堂安律選手を育成した鴨川さんも以下のようにコメントされています。

ガンバ大阪のアカデミーで指導者人生の大半を過ごしてきた鴨川さんは、決してJリーグの下部組織のあり方だけが正解ではないとも感じている。

「町クラブでも高体連でもいい子がいっぱい出てるやん。チームにいい選手ばかりが揃ってるわけじゃないから、いいパスも来ないし、いいサポートもない。だから、自分で何とかせなアカンやろ。そういう中から凄い選手が出てくる傾向があるよね」

鴨川さんが言う凄い選手の一人は大迫勇也である。ガンバ大阪ユースと対戦した鹿児島城西高時代のプレーを見た鴨川さんは、「ああいう中から野性味のある選手が出てくるし、選手のレベルがバラバラな中で練習するのはいいところもあるかなと思っている」と話す。

https://number.bunshun.jp/articles/-/849193?page=5

入りやすい

Jユースにはセレクションがあり簡単に入団することはできませんが、高校であれば強豪校でもセレクションを行わない所もあります。

高校サッカーのデメリット

Jユースと比較するとレベルが落ちる

青森山田高校のようにユースチーム相手でも完勝できる高校チームは存在します。

しかしながら、高校の強豪校でも「Jユースに昇格できなかった選手」の受け皿的な立場になっているのが現実で、ユースと比較すると選手のクオリティは低くなります。

かつて帝京高校で一時代を築いた名将 小沼監督が「東京ヴェルディ」のアドバイザーに就任した際

小沼さん

ヴェルディユースの半分がいれば、冬の高校選手権を取れる。

と発言されていました。
もちろん、そんな簡単な話ではありませんが、それくらい選手の質に差があるということなのでしょう。

当然チームとしての質にも差が出ることになり、チームメイトに不満がでてくることもあるかもしれません。

コーチのレベル

Jアカデミーは基本的にプロ経験者か育成のプロでコーチ陣が構成され、一定以上のレベルが担保されています。

高校の指導者もサッカー経験が殆どを占めますが、そのレベルは様々です。

また、選手一人あたりに対するコーチの数も少ない傾向があり、十分な指導が受けられない可能性もあります。

プロになるための組織ではない

興国高校サッカー部のように「プロ選手育成を目指す」と宣言している高校も存在します。

しかしながら、高校はあくまでも教育機関であり、チームの勝利が第一でプロ選手の養成機関ではありません。
そのため「プロ選手になる」目標からは少しずれてしまうきらいはあります。

また、立場は学生であるため学校の勉強をおろそかにすることはできず、一定の勉学も求められます。

Jユースの場合は高校を通学制から通信制に転校させるなど、サッカー以外の負担を少なくする仕組みを導入しているクラブもあります。
※ガンバ大阪など

部員数が多い

セレクション制度を採用して、サッカー部への入学を制限している学校もありますが、希望者であれば入部を許可している学校がほとんどです。
※強豪のクラブ活動が生徒獲得の手段になっている学校も多い

そのため、有名校のサッカー部であれば数十人から200人以上の部員数になることもあります。

それに伴い、様々な問題も発生します。

◆グランドの練習スペース不足。
◆レギュラー争いが激しい。
◆監督・コーチが練習を見きれない、見てくれない。
◆人間関係のトラブルが起きやすい。 など

高校特有の決まりがある

先輩・後輩の上下関係や学校独自のしきたりなど、古い体質が依然として存在しているところもあります。

アカデミー出身者など「ゆるい環境」で生活してきた選手は戸惑うことも多いようです。

古い慣習に馴染めず、クラブを退部したり、学校自体を辞めてしまう人も少なくありません。

環境が劣る

ユースと比較するとどうしても環境面では見劣りします。

「プロ養成機関の資金力・人材資産」と「高校」ではあらゆる環境において差があります。

ユースのレベルが高いのは育成水準が高いからだけではない

「ユースの方が選手のクオリティが高い」

サッカーに関わる人であれば誰でも知っている事実です。

ただ、これはJユースの育成能力が高いからではなく、ユースに良い人材が入団する流れが確立されているからです。

Jアカデミーのスカウティング

Jアカデミーのスカウティングは強烈で小学生年代からスカウティングを開始し、有力な選手を常に追い続けています。

有力選手には本人や監督、その両親ともコミュニケーションを取り、Jアカデミーに入団してもらえるようにクロージングを行うほどで、良い選手は幼少年代からJアカデミーが取り込む形が確立されています。

そしてユース年代には、ほぼJユースが良い人材を独占する形になる、というわけです。

実際にU-16年代、U-17、U-18日本代表のメンバーを調べるとほとんどがJアカデミーの出身者で独占されています。

2021年10月 U-16日本代表候補トレーニングキャンプメンバー
Jアカデミー所属:22名
高体連所属:5名
2021年10月 U-17日本代表候補トレーニングキャンプメンバー
Jアカデミー所属:25名
高体連所属:1名
2021年11月 U-18日本代表候補トレーニングキャンプメンバー
Jアカデミー所属:21名
高体連所属:6名

高体連などの方が圧倒的に選手人数が多いにもかかわらず、各年代のトップ選手「年代別代表」をユースが独占しています。

いかにアカデミーに良い人材が流れているかが理解できるデータで、実際に高校入学時のトップ選手は9割方、Jユースを選択しています。

元サッカー選手

サッカーでは才能がない選手を育てることは難しい。
それを理解しているからこそ、アカデミーは幼少期から徹底したスカウティングを行っています。
通える地域にいる有力選手はすべて把握しているといっても過言ではありません。

進路選択の目安

様々な関係者から話を聞く中で、高校新卒でプロになる進路選択の目安は以下のとおりです。

◆「Jユースでの実力が上位」ならばユースを選択
◆それ以外の人は幅広い選択肢を検討

Jユースの高卒プロ枠はあまりにも狭き門です。

何が何でも「Jユース」という人が多数派ですが、自身の立ち位置と目標を明確にした上で、幅広い選択肢を検討した方が良いでしょう。

スカウト網が全国各地に浸透している現在であれば、有力な選手は必ずどこかの網に引っかかるようになっています。

ユースであっても、高校であっても実力さえあればプロサッカー選手になることは可能です。

最終的には中学年代時の実力と適性、運次第になると思いますが、自身の特徴に合ったチームを選択すると良いでしょう。

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