法人調査員の細かな仕事内容、調査する項目、ノルマの存在まで、仕事に関する情報を紹介します。
法人調査員の仕事内容
法人調査員の仕事は簡単に説明すると、割り当てられた企業を調査し、レポート(報告書)にまとめることです。
一日当たり1社から2社を調査します。
その過程で営業も行ったり、担当顧客のフォローなども行います。
また、破綻企業などの取材を行うこともあります。
調査する項目
会社概要(代表者・資本金・住所・沿革など)から、仕入先、販売先、取引銀行、財務内容(決算書)、不動産状況(会社や代表者)など様々な情報を聞き込みます。
ページ数にして概ね10~20ページになります。
どのような調査・取材があるのか
まず法人信用調査ですが調査には直調(直接調査)と測調(側面調査)があります。
・測調(側面調査)
前者は調査先にアポイントをとり、直接面談により調査をします。
後者は相手に知られずに調査をしてほしいとの依頼だったり、直調を拒否(取材拒否)された時などに行います。
側調では取引先や関連先などを調べます。
もちろん、直調のほうが調査としては容易で、内容もより充実します。
直調の場合でも、調査先に依頼主を教えるのは厳禁(どこからの調査なの?と聞かれることはよくありますが教えてはいけません)。
調査以外の取材では、倒産企業などの取材もあります。
(業界用語で不渡り取材とも言います)
また、各社の情報誌に掲載するための取材もあります。
これは新聞や本屋で販売されているような経済誌の取材に近いです。
直接部門は2つの部があります
大手や中堅の調査会社では、一般的に直接部門は「調査部」と「情報部」の二つに大別されます。中小の業者では、この区別はあまり存在しません。
<調査部>
個別の企業調査を担当します。上記の「調査の流れ」で述べたような内容です。
入社すると、普通は調査部に配属されます。
調査件数をこなすことで経験も積んでいきます。
<情報部>
破綻企業の取材や、要注意企業などへの独自取材を行います。
調査部で経験を積んだ人や適性のある者が情報部に配属されます。
調査会社では花形的な存在でもあります。
実際の仕事の流れ(一例)
実際の仕事の流れの一例を紹介します。
②各調査員に支社長や調査課長などが割り当て。
③商業登記や不動産登記などの取得。
④社内資料(既帳)やインターネットなどで、調査先の内容を確認する。
⑤調査先にアポイントを入れる(通常は電話)。
⑥現地にて面談を行う(ヒアリングや決算書の入手など)。営業も行う。
⑦内容の裏取りを行う(調査先の取引先などに確認)。
⑧調査報告書をまとめて提出。
⑨審査担当者(管理職など)が審査。
⑩修正などがあれば直して再提出→完成。
※取材拒否や依頼主が直接訪問を希望しない場合は、いわゆる「側面調査」を行います。
いかに自然に話を聞き出せるかが勝負
直接調査では直接、会社を訪問して社長や役員から話を聞き込みます。
調査員といっても所詮は「会社とは関係のない人」であり、警戒心があるためか、普通に接しているだけでは表面的な情報しか教えてもらうことはできません。
その壁を初回から突破できるような、その企業の核心に近い部分を「つい話してしまった」というような聞き上手な人ほど調査員としての評価は高くなります。
その結果として、調査レポートの「深度」が深くなり、調査会社としての信頼度も向上します。
基本的には個人仕事が中心
法人調査員は調査や確認において他者と関わることはありますが、基本的には個人主義で業務が行われています。
情報誌・広告販売も大事な仕事
意外に思うかもしれませんが、調査員(記者)は調査だけでなく、営業も強く要求されま
す。基本的に調査会社は、営業を重視しています。
調査会社は経済情報誌や企業年鑑なども発行していますが、これらの刊行物には広告、広告枠があります。
中にはこの広告販売の方に力を入れている会社もあり(利益率が良い)今では調査がわずかで、情報誌や広告の収入がほとんどという会社もあります。
企業調査は相手が社長や役員のことが多く決定権をもっているため、ダイレクトに営業が効きやすいという事情もあります。
大手であっても、調査スキルが低くても営業ができれば許される風潮にあり、そのような人の方が出世しやすく、長く続きやすい傾向にあります。
大手と中小では仕事内容が変わる
大手と中小では法人調査会社の仕事内容が若干異なります。
大手ほど「調査」に力をいれ、中小ほど「情報誌や広告販売」に力を入れています。
これは調査したデータが大手ほど需要があるためで、逆に中小のデータはそこまでの需要はありません。
最大手の帝国データバンク発行データと名の知らない中小企業のデータがあるとして、クライアントがどちらを採用するのかは明白でしょう。
その結果として、中小はデータ以外の営業力でより収益を得る構造になっています。
中堅の会社では法人信用調査、取材プラス営業が中心。
小規模の会社では簡易的な企業リサーチと情報誌や広告の営業がメイン。
繁忙期はいつ?
決算の集中する3月から2ヶ月後くらいに忙しくなることが多いのですが、法人調査員に明確な繁忙期はありません。
正月やお盆は休日が多いことで、ノルマの件数をこなせずに忙しくなることは多いようです。
出世について
キャリアアップは同じ業界でも会社によって様々です。
一概には言えませんが、基本的には営業成績の良し悪しで昇格が決まります。
能力の高い人であれば、短期間で支社長や役員に抜擢される事もあります。
※中小ほどその傾向は強い。大手は年功に近い。
出世していくと仕事内容はどの様に変わるのか
昇格をしていけば、実務(調査・取材)の量は減る傾向にあります。
出世していくほど、管理者側に回るのは法人調査員も世間一般と同様です。
しかし、内勤でない限り、営業は付いて回ります。
基本的に、管理職になっても営業はしなければなりません。
身だしなみとコミュニケーション能力
仕事柄、最低限の身だしなみは大切です。
清潔な髪型や服装が整えられていないと、訪問先企業から快く調査に応じてもらえません。
また、多くの経営者と接する仕事であり、話題が豊富であることも重要です。
例えば、政治や経済、そしてその地域の話題なども必須になります。
ノルマについて
法人調査員にはノルマがほぼ確実に設定されています。
調査の件数や営業の獲得件数などの目標があり、評価はもちろん歩合給にも響いてきます。会社によっては未達成者対する降格が日常茶飯事のところもあるようです。
離職率の高い原因のひとつがこのノルマの存在といえます。
ただ、法人調査員は外回りも多いためある程度の裁量があり、サボろうと思えば手を抜きやすい職業なのです。
ある程度プレッシャーをかけなければ、社員の働きが鈍くなる恐れがあり、厳し目のノルマも「必要悪」と割り切っている側面もあります。
自腹営業をする人も
ノルマのプレッシャーの強い会社では社員が自腹営業をするケースもあります。
あと数件でノルマクリアになるような状況であれば、誰しもが考えることなのかもしれません。
それらの積み重ねから多重債務に陥ったり、自己破産に至る人もまれにいます。