消防士として働いている人で
「パワハラやセクハラ・いじめが存在していない」
と宣言できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
結論から言うと消防士という職業にパワハラ・いじめは少なからず存在しています。
なぜパワハラ・いじめが起きるのか
なぜ消防の世界でパワハラやいじめが発生するのか?
実際に取材を通して聞いた理由をいくつか挙げてみます。
上司には逆らえない
消防では上司の言うことは絶対です。※上司次第
誰も否定する人がいないため、言動が暴走したとしても止められません。
消防士なら誰もが理解してくれると思いますが、職場環境は上司次第。
上が良い人間ならチームも良い組織になります。
逆に上がクソならチームはギスギスした雰囲気に。
風通しが悪い密室空間
消防では消防署内の数十人、部隊の数人と常に行動を共にしており、外部の人間と関わることはあまりありません。
小さな集団であるために、何らかの歪が発生した場合はこじれやすく、仲間はずれやいじめ問題が起きやすくなっています。
外部の人間と頻繁に関わる状況であれば自制が効きやすいと思われますが、少人数部隊の構成を変更する事は職務構造上難しく、今後も風通しの良くない状況が変わることは無いでしょう。
ストレスの多い現場
24時間勤務であることやスピードが求められるプレッシャーの強い業務であることから、仕事に対するストレスは相当なものがあります。
◆閉塞的な人間関係のストレス
◆上司からの圧力、仕事ができない部下の対応
◆医者や警察、家族からのクレーム・恨み節 など
その様な状況だけに、抱えている不満をどこかにぶつけてしまいがちになるとか。
いつもイライラするようになり、パワハラを起こしやすい環境が生み出されていきます。
伝統的な体質
消防士の世界は昔から「シゴキ」のように追い込んで鍛える気質があります。
追い込んでの成長を促す手法がとられている中で、その程度が過度になってしまいパワハラやいじめとなってしまうこともあるようです。
やんちゃな人間が多い
一般の人の消防士に対するイメージとして言い方は良くないですが、「体力バカ」「やんちゃ」といった印象を持っている人も少なくないでしょう
体育会系で育った人は「いじめ」と「いじり」の境界線があやふやになりやすい傾向にあり、実際にパワハラやいじめ行為をしやすい人材が集まっていることは確かです。
消防士は体育会系です。
警察官ほどではありませんが、昔ながらの縦関係は今もそれなりに残っています。
ただ、かつてよりは緩くなっていることは確かです。
パワハラ・いじめの例
実際に聞いたパワハラ・いじめの例を紹介します。
◆攻撃的な暴言をはかれる。
◆やたらと事務仕事を押し付けてくる。そのうえで残業をするなと矛盾したことを言われる。
◆消防用ホースで水をかけられる。
◆金銭の貸与を求められる。
◆裸踊りなど過度な宴会芸を求められる。
◆過度なトレーニングを強要される。
◆雑用を過度に押し付けてくる。
◆物理的に暴力をふるってくる。
パワハラ教科書の1ページ目に出てくるようなものばかりです。
パワハラ事件
東京消防庁は1日までに、部下への不適切な指示で職場環境を悪化させたなどとして、牛込消防署(東京・新宿)の前署長の男性消防監(56)を戒告の懲戒処分にした。
前署長は3月31日付で依願退職した。
昨年12月に自殺を図って死亡したとみられる同署消防係長の男性消防司令(47)がパワハラを受けていたと投書があり同庁が調査していた。
パワーハラスメントなどに関する実態調査の結果を受け、大阪府茨木市消防本部は25日、後輩の女性職員にセクハラをしたとして40代の男性消防司令補を停職3カ月の懲戒処分にした。
ほかに暴言や暴行などの事案や管理監督責任で厳重訓告などの処分を20人に対して計25件行った。
部下をほかの職員の前で大声で叱責したとして、泉頼明消防長も厳重訓告とした。
板野、上板両町を管轄する板野西部消防組合で、50代の男性消防司令(課長級)が部下の30代の男性職員にパワーハラスメント(パワハラ)行為を行っていたことが11日、消防組合への取材で分かった。司令は事実を認め、組合もパワハラと認定したものの、被害者の職員から訴えがなかったのを理由に職員本人への聞き取りはせず、司令を文書による厳重注意とした。
組合によると、司令は2016年1月から4月にかけて、職員に対し「おまえぐらいのやつ、いつでも辞めさせられる」「おまえはわしの言うことに『はい』とだけ言っていればいい」などと発言した。
外部からの情報提供を受け、幹部職員3人でつくる調査委員会が今年2月中旬から聴取。司令の暴言3件をパワハラと認定した。
消防官 パワハラ ニュース と検索するだけでかなりの数の事件が表示されます。
実際に表面化されているのは一部で全てではありません。
表に出ていないだけで、似たような問題はどこも抱えているはず。
との声もあり、なかなか根深い問題だと認識させられました。
パワハラ研修は行われており改善の兆しも
消防庁では消防署においてパワハラが発生しやすいことは認識しており、予防研修を開催するなど対策を打ち出しています。
取材をした中で
かつてはもっと酷かった。
昔はお茶の入れ方ひとつだけで、怒号が飛んできましたから。
社会の変化に応じて、パワハラ問題に関しては、改善されてきてはいます。
との声もありました。
パワハラをピックアップした情報を集中させたため、このページを読んだ人は消防の世界に酷いイメージを持ってしまったかもしれませんが、実際には誰もが苦しむようなパワハラ環境というわけではないので安心してください。
あくまでも、そういった部分もあるという情報の一つに過ぎません。
もし自身が被害にあってしまったら
警察の世界でも同様ですが、部隊での行動が絶対である消防士ですから、職務構造上、上司からの命令がパワハラ気味になってしまうのは、ある程度は仕方のない事ではあります。
上司の命令に迅速に従う能力は消防士の最重要能力とも言え、多少の理不尽であっても許容できるだけの心構えは必ず持っておかなければなりません。
しかしながら、度を過ぎた要求や暴言は許されるものではありません。
もし、消防士になった後に自身に被害が及んで来た場合は、ひとりで悩まずに上層部への報告や外部団体に通告するなどの対策を取ると良いでしょう。
現在では配置変更や部署異動など、状況に応じて対応するように消防組織も変化してきています。