郵便配達員の仕事内容を紹介します。
配達員は郵便物を配達するだけの単純仕事だと思われがちですが、実際には書留や速達などで対応を変える必要があり、配達処理の手順は複雑になっています。
また、集荷や営業など付随する業務も多岐にわたります。
郵便物の区分
送られた郵便物は郵便部によって町名に区分されて、キャスター付の籠に入れてあります。
それらを、自身の担当区域の籠に更に細かく区分します。
定形と定形外に分け、区分棚と呼ばれる升目の棚に区分していきます。
区分棚の升目を区分口と言い、区分口は上から下に、左から右に配達順に並んでいます。
区分は立って行い、朝の忙しい時間のため無言で淡々と作業を行います。
道順組立
道順組立とは、早く間違いなく配達できるように郵便物を配達順序に並べる作業です。
区分棚の前が机になっており、そこで座りながら作業を行います。
区分口から郵便を出して、左から右へ、郵便を少しずつずらしながら配達順に並べていきます。
それぞれの区分口には配達原簿と呼ばれる配達の順を記したカードが入っており、それを立て掛けて見ながら並べ上げます。
慣れている人(ほとんどの人)は原簿は立て掛けているものの、記憶だけで素早く並べる事ができます。
終わるとまとめて区分口に戻して、道順組立が完了です。
追跡郵便物の授受
書留(簡易、現金、一般)、配達証明、特別送達、レターパック(プラス、ライト)、着払い、代引き、追跡ゆうメール等の追跡郵便物を受領し、携帯端末に入力し、その後、それぞれの郵便物を種別ごとに配達順に並べます。
書留はアルバムのような1通1通収納できる書留フォルダがあり、そこに収納して書留カバンに入れていきます。
※書留カバンは配達員が腰に付けている革製のカバンのこと。
書留フォルダには落下防止のクリップ付きの紐が付いており、紐をベルトに通してクリップで固定します。
他の郵便物はファスナー付きの安全ケース(クリアケース)に収納します。
小包も小型のものは郵便配達員が配達することもあります。
配達
各家庭や企業に郵便物を配達します。
また、配達をしていると差出しの郵便を渡されることもあります。
ポストがない家は、玄関のドア枠に挟んだり、袋に入れて吊るしてみたりと確実に届けられるように試行錯誤します。
自転車の前カゴに入れておいて欲しい、玄関に置いて欲しいと頼まれることもあり、お客の要望に応じて柔軟に対応するようになっています。
途中でキャリーボックス(荷台の箱)から前カバンに荷物を移す作業があるのですが、通行の妨げにならないよう人通りの少ないところで停車したりと色々気を遣う事も。
夏場は熱中症になりやすいため、適宜、水分補給をします。
喉が乾燥するため、マスクとのど飴は必須アイテム。
配達先での郵便商品の営業・販売
書留等の対面授受の際に営業を行う事もあります。
年賀状やかもめーるの時期は注文はがきを手渡します。
注文はがきには自身の印鑑が押してあるため、注文があると営業成績に加算されます。
その他には、レターパックや切手は定期的に企業から注文が入ります。
記念切手等はお客から声をかけてもらうこともあり、そのような人に会った時には新発売の記念切手のチラシを渡すなどの営業を行います。
普段からお客と挨拶を交わし交流を持つことで、営業成績にも繋りやすくなる側面があり、積極的なコミュニケーションが取れる人ほど、成績は良好になります。
大量の郵便物がある場合
役所等から全戸配布の郵便物がある時は1日では配達しきれないため、数日に分けて計画的に配達を行います。
※計画配送と呼ぶ。
最近の例でいうと、10万円給付金申請書の全戸配達やアベノマスク配布が良い例です。なかなか大変です。
トラブルも多い
タイヤのパンクは付き物で、犬に噛まれる、蜂に刺される、田んぼに落ちる、交通事故に遭う等、些細なトラブルは日常茶飯事です。
台風や大雨警報時など
大雨など通常の配達が難しい場合は、代表者が一人で班全域の速達郵便だけ持って配達に出ます。
大雨や台風で局が機能しなくなれば配達はありませんが、基本的には郵便を減らしてなんとか配達を行います。
落雷時などは出発時間をずらすときもあります。
郵便物の集荷
配達の反対に、企業に毎日決まった時間に、後納郵便等の集荷に向かいます。
集荷は種別や重さごとに事前に分けておいてくれる企業もあれば、秤で一通一通その場で重さを計る企業もあり様々です。
土日や祝日は休みのため、集荷のない企業がほとんどです。
速達などが多い企業の場合は午前・午後と2回配達に行くこともあります。
事故郵便物の転送処理・返送処理
転居届が提出されている旧住所に届いた郵便物は新住所を印刷した転送シールを旧住所の上に貼り付けて転送処理を行います。
転送シールの余白には自身の印鑑を押し、責任を持って処理を行う形になります。
お客様の転居情報は配達原簿に記載されており、該当する区分口に転居シールが保管してあります。
全部転居や一部転居があるので、必ず確認しながら転送処理を行います。
※転送期間は1年間で、延長することもできる。
事故郵便物の処理
番地抜けや部屋番号抜け等住所が不完全だったり、存在しない住所宛に郵便が来ている場合は返送処理を行います。
宛名の近くに「宛名不完全のため配達できません」「宛所に尋ね当たりません」等の判子を押し、担当者がダブルチェックを行い、2人分の印鑑を押して返送します。
事故郵便物はまとめて入れられる区分口があり、時間がある時やひと通り仕事が終わった帰り際にまとめて処理を行う事が通常です。
配達を間違えた場合
配達を間違えるとどうなるのか?
配達間違いが明らかになった場合、その日にその区域を配達した人を特定して班長が事情聴取をし、報告書を作成します。
その後に客への謝罪も行います。
客がポストに誤配郵便物を入れた場合も、その後区分機をかけるときに弾かれ誤配が判明するようになっています。
※これをポスト上がりと呼びます(誤配では大多数を占める)
誤配達にはペナルティはない
バイクの事故ではペナルティがありますが、誤配達では注意されるだけでペナルティは特にありません。
月に何件で退職勧告というような決まりもありません。
ただ、あまりに大きなミスをすれば始末書や減給になる事はあります。
配達員の1年目と2年目以降の仕事
1年目はとりあえず仕事の流れを覚え、自分が担当する1区をマスターします。
配達の際も先輩社員のフォローを受けながら、徐々に配達のいろはを学んでいきます。
2年目以降は配達できる区を2区3区と増やしていき、徐々に夜勤や休日出勤を任されるようになります。
※夜勤や休日出勤者は所属する班の全域の再配達郵便を配るため、ある程度慣れて担当区域(専門に配れる区)を増やしてからでないと難しい。
1年目は覚えることが多い
1年目は全くの新人ですから、時間内に配達を終えることはほとんど不可能です。
郵便物を配達順序に並べる道順組立もいちいちファイルを見ながら、他の人よりも大幅に遅れて仕上げることになります。
更に、他の人は地図も何も見ずにスイスイと配達していく姿を見て、自分の無力ぶりに心が折れて退職してしまう人も少なくないようです。
ただ、1年目を乗り越えることができれば定着する人が多いようで、とりあえず1年間働き続けることを目標にすると良いでしょう。
2年目以降は慣れてしまえばなんとかなる。
1年目は大変だけど、頑張ってほしい。
2年目以降
経験を積むにつれて仕事内容や立場は変化していきます。
教わる立場から新しく入った社員に仕事を教える立場になり、自分だけの仕事から班全体の仕事を任されるようにもなります。
理解の早い人、遅い人と様々な人がいますが、丁寧に仕事を教えていきます。
出世の意志がある場合は、昇職の意思を上司に伝えて役職のための試験(面接等)を受けて昇進を目指します。
営業
郵便配達員は配達の他に営業活動も行う必要があります。
基本的には年賀状とかもめーるの2つが営業商品で、時期でなければ特に営業しない事がほとんどです。
記念切手などを集めているお客から発売日に声をかけられることもあり、そういう時には切手の営業をすることもあります。
郵便物数が多すぎて、余裕がない時は営業ができないことも。
自分の身内や大口の営業先があり、既に目標達成している時は営業自体しないこともあります。
現在ではノルマは設定されていませんが、かつては自爆営業やむなしの強烈なノルマが設定されていました。
詳細なノルマの状況はこちら
繁忙期
配達の繁忙期はお中元配送の8月と年賀状配達の12月・1月。
特に年末年始は年賀状配達の準備で期間限定のアルバイトも大量に増員されるため、教育・指導の手間も増えて忙しくなります。
また、連日連勤・残業が続き、社員は皆、疲労困憊状態に。
その結果としてフロア全体がピリピリとした雰囲気に包まれ、社員同士の喧嘩が起こりやすい状態になるそうです。