「暴力団員・ヤクザ」
非合法の世界の住人とは知っているけれど、実際にどのような仕事をして、何をして収入を得ているのかを知っている人はほとんど存在していないでしょう。
ヤクザの仕事は多種多様なものがあり、裏社会の全てに関わっているといっても過言ではありません。
そんなヤクザの仕事内容と1日のスケジュールについて解説します。
ヤクザの仕事内容はお互いに教えない
実は同じ組の組員同士でも、お互いの仕事(シノギ)について話すことは少なく、隣に座っている兄弟分ですら、知らないケースも多いのです。
日々の生活から大体の予想はされるものの、お互いにメシの種を明かすことはありません。
なぜか?
それは、誰かに知られてしまうとシノギを横取りされる可能性があるからです。
実際、美味しいシノギを巡っての争いは裏社会では日常茶飯事に発生しています。
そもそも非合法の世界ですから、どんなにあくどい手で「横取り」されたとしても警察も弁護士も誰も助けてはくれません。
全て自分の責任となる弱肉強食の世界なのです。
また、収入額がバレてしまうと「金を貸してくれ」などと余計な「タカり」にあう恐れもあります。※貸しても返ってくる可能性は低い
そのようなリスクを避けるため、お互いのシノギは「秘密」にするのが業界の常識となっています。
ヤクザからのタレコミをもとに闇金や振り込め詐欺のアジトにタタキ(強盗)に入る人間もいます。
闇金や詐欺は非合法であるため、闇討ちで襲撃されて奪われたとしても警察に頼ることはできません。
ヤクザを狙うヤクザがいる奪い合いの世界です。
このようなことが当たり前に起きる業界ですから、自身の収入源を明らかにするメリットは何もありません。
仕事内容一覧、普段は何をしているのか
ヤクザの仕事内容を一覧表示して簡潔に説明します。
地回り
ヤクザは縄張り(管轄地域)内でみかじめ料を徴収したり、賭博や売春などの違法活動を組織したり、商売を保護するなどの経済活動を行っています。
地回りとは、トラブルで荒らされるなど、縄張り(管轄地域)で問題が発生していないかを見回わる業務です。
許可なく違法薬物売買やカジノを開いている事があれば、捕まえたうえに、上納するか出ていくかの選択を迫ります。
ケツモチ・用心棒
ケツモチ契約している個人・企業・店が何らかのトラブルに遭った場合、ヤクザの看板を盾に問題を解決します。
かつては都心部の夜の繁華街では、ヤクザに金銭を支払わないと営業自体ができない地域もありました。※現在では少なくなってきている
リスクが低く、定期的に一定の金額が得られるため、ヤクザとしては一番美味しい仕事の一つ。
特殊詐欺
リスクが低く、リターンの多い「特殊詐欺」が業界の主力収入源になりつつあります。
詐欺自体は昔からの収入源ですが、インターネットの普及により人と会うことなく騙せるようになった結果、業界でのブーム?となっています。
なりすまし詐欺(オレオレ詐欺)
家族や親族になりすまし、多額の負債を抱えてしまったなどと電話をかけて金銭をかすめ取る詐欺。
還付金詐欺
市役所職員や税務署職員になりすまし、還付金の手続きのため口座の確認が必要などとキャッシュカードの提出や入金をさせる詐欺。
架空請求
「有料サイトの利用がある」などと架空の債権をでっち上げて、金銭を支払わせる詐欺。
違法薬物売買
覚醒剤や大麻など法律で禁止されている薬物を入手し、販売します。
実際に販売を行っているのはプッシャーと呼ばれる売人(半グレや一般人)で、ヤクザ自身はいわゆる「卸し」のみを担当する事が多いようです。
頭のいい人物ほど、リスクが少なく利幅の多い業務を担当しています。
会社経営・事業経営
まっとうな表の企業から企業舎弟、ダミー会社まで幅広く事業を行っています。
いち企業として、適切に利益を出している所も数多く存在します。
・土建屋、産廃業者など
・風俗店、キャバクラなど性産業
・人材派遣業
総会屋
現在では減少しましたが、総会屋として暗躍してるヤクザもいます。
総会屋といっても、味方になったり、敵になったり、企業から金銭をかすめ取る手段は様々なものがあります。
事件系
企業のスキャンダルをネタに恐喝する。
企業・役員の不祥事があり、水面下で交渉が行われる。
総会荒らし
株主総会で嫌がらせ行為を行い、やめる代わりに金銭を要求。
進行屋
株主総会が円滑に進むよう、「異議なし、賛成」と叫んで会議の進行に協力する。
仲裁行為
別の総会屋とのトラブルの間にあえて入り、謝礼名目で金銭を得る。
総会屋同士ではお互いに裏で手を結んでいるケースも多い。
ノミ屋・賭場開帳
個人的な賭博場の運営。
競馬など公営競技の私設の投票所を開設。
インターネットが普及したことにより、現在では存在自体が減少しています。
店舗運営
飲食店やキャバクラ店、風俗店などを運営。
表向きの経営者を一般人にしておき、実際の経営はヤクザが取り仕切ります。
最近では、「ぼったくりバー」などの営業形態も出現してきています。
取り立て
債権の持ち主から代理で取り立て行為を行います。
◆お金を持ち逃げした従業員
◆売掛を飛んだ客
◆裏の仕事の不義理
裏の人間はなかなか表の世界では生活できません。
ヤクザの威光、ネットワークを活用して、どこまでも追い詰めます。
取り立て妨害
取り立ての逆に「取り立てから守る仕事」もあります。
振り込め詐欺の店長がお金を持ち逃げしたものの、Aというヤクザに捕まる。
Aから莫大な金銭を要求されるが、Bというヤクザに依頼して仲裁してもらった。
裏世界の取り立ては警察を利用されることがないため強烈で、最悪のケースでは命を失うこともあります。
裏世界の弁護士として依頼人の安全を守る仕事になります。
恐喝行為
何らかの「ネタ」を手に入れ、それを元に対象者を恐喝します。
特に警察に頼めない(表に出せない)危ないネタほど、得られる報酬は高くなる傾向にあります。
◆プロ野球、プロサッカー選手のスキャンダルから恐喝
◆債権の代理人として恐喝
窃盗・強盗
リスクが高くなりますが、窃盗や強盗を生業にしている人もいます。
窃盗の場合は盗んだ後に、バレることなく捌くルートが必要になります。
・事務所荒らし
・電線盗難
・自動車、バイク
・なまこの密猟
・りんごやぶどうなどの農作物
興行
現在では壊滅状態ですが、昭和から平成の時代までは暴力団自体が興行主として興行を行うことも少なくありませんでした。
美空ひばりさんが所属していた「神戸芸能社」は山口組の直系企業。
チケット販売に協力したり、資金提供をしたりと暴力団と芸能界は密接なつながりがありました。
芸能系は反社との関わりが断絶されるようになったものの、格闘技関係は現在でも裏で暴力団が暗躍していると言われています。
音楽活動
とてもめずらしいケースですが、最近では現役の本職でありながらミュージシャンとして活動している人もいます。
・KENNY-Gさん(住吉会系)
ラップの世界は「悪ければ悪いほど良い」傾向があり、ヤクザであってもステージに立つ資格が否定されることはありません。
彼らの他にも、半グレや元ヤクザなどアウトロー出身者が数多く活躍しています。
役職別の仕事内容
ヤクザの仕事内容ですが、組織の規模や立場によって様々なものがあります。
組長、幹部、組員と3階級に区別して解説していますが、末端の組員でも良いシノギを持ち、小さな組織を形成して組長クラスの生活をしている人もいます。
そのあたりは個人の才覚とセンスによって大きく異なります。
シノギの腕のある人なら組長を遥かに凌ぐ資産を持っている人もいる。
闇金やオレオレ詐欺の最盛期には毎月億単位の稼ぎがある人もいた。
組長
組長クラスであれば、人と会うことや組のマネジメントが中心で「みかじめの回収」などの細かい仕事は行いません。
掛け合いや交渉ごとの最初・最後に同席して威光を見せつけるくらいです。
2次団体、直参クラスの上位団体の組長クラスになると上部団体の当番や義理事、組の決まりごとくらいで、基本的に仕事はありません。
一方、4次団体など小規模暴力団組長の場合はシノギに忙しく、末端組員と変わらない日々を過ごすことが多いようです。
組の規模次第ですが、株式会社でいう社長と同様に近い仕事内容です。
幹部
幹部クラスの主な仕事は現場を管理することです。
◆掛け合い
それなりの役職になると掛け合いに呼ばれることが多くなります。
依頼者の有利になるように、落とし所を見つけて交渉を行います。
シノギの管理
配下の組員を使用して、シノギの管理を行います。
株式会社でいえば課長や部長のような中間管理職の立場になります。
組員の管理
組員の教育や人生相談など、人材育成と管理を行います。
そもそもヤクザになろうと考えている人材ですから、手に負えない輩も少なくありません。
そのような人間を組織に順応させるために、あらゆる手を使って教育します。
急成長する勢いのある組には、良き相談相手となる兄貴分が必ず存在しています。
組員
組員の仕事は現場に出て、実行部隊として働くことです。
◆みかじめ料の回収
スナックや風俗店などに出向いて現金で回収。
警察にバレてしまうため、間違っても銀行振り込みなどは使用しません。
◆現場仕事
人夫出し(人材派遣のようなもの)をしている場合は現場に行って管理を行います。
おしぼり提供会社や風俗店などフロント企業がある場合はそこで働くことも。
◆人と会う
・シノギで協力して貰っている人に合う。
・若手組員のスカウティング。
・ケツモチを請け負っている店への現状確認。
・縄張りの見回り、など。
末端組員であるほど、多種多様な仕事内容になり忙しくなります。
平の組員の仕事内容は、ほとんどパシリみたいなもの。
ただ、末端でも人をうまく使って仕事を回せる人は左うちわで暮らせる。
そういう人間は上にどんどん上がっていく。
部屋住み
部屋住みとは組に入った新入りが、親分と同じ家で寝食をともに生活して、24時間体制で身の回りの世話をする修行期間。
親分、兄貴分との生活を通じて礼儀作法、ヤクザの心得を学んでいきます。
なぜこのような厳しい状況に新人を放り込むのか?
それは、ヤクザになろうと考える人は、もともと無法者・礼儀知らずの気質があり一筋縄ではいきません。
人の管理下に黙って従っている人間ではない事がほとんど。
そのような人材を物理的に矯正するため、敢えて厳しい環境を構成して礼節や心構えを叩き込みます。
◆食事つくり ※朝昼晩の食事を作る。
◆掃除、炊事洗濯
◆電話番
◆シノギの手伝い
◆親分・兄貴分の送迎
◆話相手
一日のスケジュール
事務所内で部屋住みに作ってもらったり、出前を取ることも。
時間の都合で仕事(シノギ)の関係者と食事をとることもある。
上記は幹部クラスの一般的な流れを図解しましたが、実際のスケジュールは立場やシノギの種類によって様々です。
幹部クラスであれば関係者との会食やシノギの調整が中心になり、比較的余裕のある生活が可能になります。
末端の組員であればシノギの現場に赴く、出動することが多くなり、寝る間も無いほど忙しくなることも珍しくありません。
管理者と労働者の関係は一般企業と変わりはありません。
上記スケジュールには入れていませんが、10時、16時など指定の時間に組事務所に電話を入れさせて安否確認をする組織もあります。
※攫われたり、警察に逮捕されている可能性があるため
部屋住みの一日のスケジュール
現代の丁稚奉公ともいわれる「部屋住み」の一日のスケジュールです。
合間に親分の送り迎えやシノギを手伝うこともある。
お風呂を用意する。
朝から晩まで雑用に終止し、家政婦さながらの生活を送ります。
交代制ですが、休日は少なく、完全に労働基準法の適応外。
※部屋住みの人数次第
もともと普通に働けない人の集まりですから、自由の利かない「部屋住み」はかなりの負担となるようで、1ヶ月もしないうちに相当数が逃げ出してしまうといいます。
あまりに逃げ出す若手が多いため、最近では部屋住みの負担を減らしたり、部屋住み制度自体を廃止する組も増えています。
労働時間はどのくらい
「定時」という概念は当然存在せず、労働時間は不定期で状況次第。
何もトラブルがなければ、偉くなるほど暇を持て余す事が多いようです。
組長クラス
下から上納されるように仕組み化されているので、実際の労働時間は少ない。
指定暴力団の上部団体の組長クラスだと何かの儀式や重要なイベント以外は動くことはありません。
組長クラスだと人に合う以外の仕事は少なくなります。
幹部クラス
忙しくなるか、暇になるかはシノギ次第。
中間管理職となるため、組員以上に忙しい人も多い。
組員
組員であれば普通の人と同じようにフロント企業などで1日8時間労働になることも。
末端になればなるほど、急な呼び出しや雑務を担当することが多くなり、労働時間は増えやすくなります。
結局は人脈がすべて
ヤクザといえども、勝手気ままに暮らしているだけではお金は降ってきません。
トラブルが有るところにヤクザの飯の種があるわけですから、想像以上に「縁」が大事で上の立場になるほど、関係者との会食は増えてきます。
美味しい情報や裏の世界の依頼は大々的に公表されるものはなく、すべて誰かのツテから巡ってくるものです。
会食や義理事などで日常的に多くの人とコミュニケーションを取り、裏の世界のつながりを太くしておくことも大事な仕事のひとつになります。