ヤクザの罰則処分には「破門」「絶縁」がありますが、文字の雰囲気だけで「クビ」に近いということはわかりますが、明確な違いはわからない人がほとんどでしょう。
その他に、罰則的な意味のない「除籍」という処置も存在しています。
暴力団の世界で頻繁に使用されている「破門」「絶縁」「除籍」について解説します。
ヤクザの処分
ヤクザの処分には以下の3種類が存在します。
②絶縁 (組織・業界から追放)
③除籍 (勇退・引退)
簡単に説明すると「破門」は組織からの追放、「絶縁」は組織及び暴力団業界からの追放、「除籍」は引退・勇退という意味になります。
誰が処分を決めるのか
最終決定は組長が行いますが、執行部が総合的に判断して処分を決定する場合もあります。
なぜ破門状をまわすのか
なぜ破門状を回すのかと言えば、単純に人員管理の意味もありますが、「うちの組織の人間ではない」という事実を明確にしておくためです。
破門になった人物が組を追放された後にトラブルを起こした場合
アイツはお前(〇〇組)の所に所属してるだろ。
どう責任取るつもりだ!
と責任問題に発展することがあります。
また、同業者だけでなく、警察とのトラブル時にも使用者責任などで「組の責任」が問われる事があり、「無関係」を明確にしておかないと組を巻き込んだ大きなトラブルに発展する可能性があるからです。
破門になる奴は相当に癖が強いからトラブルを起こしやすい。
性犯罪や無免許事故など最低レベルの事件で逮捕された時に、無関係なのに構成員として組の名前が出てしまう可能性がある。
そうなると組としての価値が下がってしまう。
破門
上記は山口組が神戸山口組の首謀者を処分した破門状です。
役職と名前、年齢などが記載され、業界の関係各所に郵送で送られ周知されます。
破門とは
破門とは所属する組織からの追放を意味する処分です。
破門には黒字で書かれた「普通の破門」と赤字で書かれた「赤字破門」のふたつがあり、赤字破門の場合は永久に業界には復帰できない事を意味します。
【理由】
破門になる主な理由には以下のようなものがあります。
基本的には組織に迷惑を掛ける行為が該当します。
◆「万引き」など、くだらない犯罪で何度も逮捕され、組織の看板を汚した。
◆薬物中毒となり組員としての日常生活がままならない。
◆組の出入りがない。連絡が取れない。
【復帰】
破門の処分を受けても、本人の反省と周囲の理解があれば復帰できる可能性があります。
また、元の組織と無関係の暴力団であれば、破門であろうとも他の組織に移籍することができます。
ただし、赤字破門といわれる、赤字で破門状が書かれている場合は絶縁と同様に拾い上げ禁止となり、再び業界に復帰することはできません。
どのくらいの期間で復帰になるのかは元の組織のさじ加減ひとつですが、数ヶ月程度の短期間で復帰になることはありません。
復帰する場合には、破門時と同様に関係先に復縁状が郵送され、周知されます。
絶縁
上記は山口組が神戸山口組の首謀者を処分した絶縁状です。
役職と名前、年齢などが記載され、業界の関係各所に郵送で送られ周知されます。
絶縁とは
絶縁とは所属する組織及び暴力団業界からの完全な追放を意味する処分です。
破門と比較するとより重く、重大な事件を起こした人物に下される処分。
【理由】
絶縁になる主な理由には以下のようなものがあります。
基本的には組織に重大な迷惑を掛ける行為が該当します。
◆重大事件で逮捕され、組織の看板を汚した。
◆薬物売買の禁止など組織の規定を破る行為をした。
【復帰】
拾い上げ禁止となり、再び業界に復帰することはできません。
除籍
除籍とは
除籍とは所属する組織及び暴力団業界からの自発的な脱退、引退を意味する処置です。
破門や絶縁とは意味合いが異なり、罰則的な側面はありません。
【理由】
除籍になる主な理由には以下のようなものがあります。
基本的には本人の意向を組長が承認して除籍となります。
◆資金不足による脱退。 ※トラブルなし
◆カタギに戻る。
除籍には2つの意味合いがある
②本来なら破門だが、これまでの貢献度を顧みて除籍
①は単純に自発的な脱退や引退による「除籍」。
②は、何らかの不祥事を起こして破門以上の処分になるところ、これまでの組への貢献度が高く無下にはできないという理由から「除籍」となる。
恩情処理に近い形の除籍もあります。
偽装破門・偽装絶縁
暴対法により、配下の組員が事件を起こした場合、使用者責任で組長も同時に連帯逮捕されるようになりました。
最近は、使用者責任対策・警察対策のための「偽装破門」「偽装絶縁」が流行しており、問題になる前に該当人物との関係性を断絶偽装する組織も珍しくありません。
あるいは、問題になってから過去の日付で虚偽の破門状を作成し、「破門状を既に出している」と無関係を装う場合もあります。
そのため、絶縁状や破門状の価値が薄れてきており、本当に破門、絶縁されているのかはわからないケースが増えています。
ヒットマンは破門してから
敵対組織を襲撃する前に、襲撃役の人物を破門にしておきます。
そうすると「元組員が勝手にやったこと」という建前ができるため、組の上層部の使用者責任逮捕を免れる事ができます。
※実際にはそれで逃れられるかは微妙なラインといわれています。
かつては組の看板を背負って堂々と襲撃したものでしたが、現在では無関係を装わなければならない時代になっています。
復帰も可能に
また、業界全体が慢性的な人手不足状態に陥っており、絶縁された人物でも拾い上げる組織が存在しています。
この時代にヤクザとして活動したいという存在はかなりの希少種となっており、志一つあれば復帰を支援してくれる組織は少なくないようです。
以前は「絶縁」となれば業界に残ることは不可能でしたが、現在では復帰・現役として活動する人もいます。