一般の人がまず関わることのない犯罪集団、ヤクザ。
凶暴そうな見た目の人を「ヤクザっぽい」などと形容することはあっても、実際にヤクザとの関わり合いを持っている人はごくごく少数でしょう。
どんな人がヤクザになるのか?
各種情報誌からの参照や、かつて暴力団に所属していた「元ヤクザ」に取材を行い、ヤクザのなり方となりやすい人、その環境について調査を行いました。
※鈴木智彦著ヤクザ1000人に会いました!の統計データを使用
ヤクザになるとはどういう事なのか
その組の親分と「盃を交わす」事で親分の子分となり、その組織の組員、つまりヤクザ・暴力団員になります。
◆実際には盃を交わさず、準構成員としてあやふやな立場で組織と関わる。
◆代紋の使用料金を組に支払うだけで「名ばかりヤクザ」として縁を持つ。※代紋の威光を利用して、自身の立場を守り恐喝などを行う
ヤクザの立場も多種多様なケースがあり、一概には規定できないのが実情です。
ヤクザ・暴力団員になるには
ヤクザのなり方の例を紹介します。
※あくまでも情報として掲載しています。ヤクザになることは辞めましょう。
ヤクザ・暴力団員のなり方
暴力団員
基本的には、ヤクザになる人は、もともと不良・アウトローとして人道から外れた生き方をしている人達がほとんどです。
そして、その先輩筋からの紹介やスカウトを受けて、組に入るケースが一般的です。
暴力団が一般に人材を公募することありません。
なるためにはなんらかの「縁」が必要で関係者の知り合いがいない状態から暴力団員になることは不可能です。
何歳からヤクザになれるのか
ヤクザになる明確な年齢制限はありませんが、一定の基準はあります。
最年少ヤクザ
古き良き昭和時代には中学生年代で盃を交わし、正式に組員になった例があります。
現在でも、いわゆる「不良」であれば、多かれ少なかれ中学生時代から暴力団関係者との付き合いがあるものですが、未成年を正式に取り込んでしまうと即時に警察に乗り込まれてしまいます。
正式な組員になるのは若くても高校卒業後からがほとんどです。
年齢の上限
理論上は何歳でもヤクザになることは可能です。
ただ、加入後の組織内での立場を考慮すると、40代~50代が現実的な上限ラインとなります。
高齢で組織に加入しても実績を積み上げることは難しく、既存の組員側も扱いがむずかしくなります。
高齢で半グレのような活動をしている人でも、組とは一定の距離感を保ったまま関係を維持しつつ活動する人が多いようです。
ヤクザはバカにはなれない
ヤクザの世界では「バカでなれず、利口でなれず、中途半端でなおなれず」という実情を表現した名文句があります。
【バカ】
機転が利かず、相手の心情や状況を読み取れないバカではヤクザは務まらない。
【利口】
頭がいい人は、そもそもヤクザにはならない。
【中途半端】
極道の世界は中途半端な人間では尚、務まらない。
バカ・利口・中途半端は駄目と、すべての人に「ヤクザは向いていない」と宣言しているような文句ですが、これらの条件をすり抜ける頭のキレる人材こそが、ヤクザでは成功するという意味が隠されているようです。
ヤクザの学歴
やくざになるために学歴は全く必要ありません。
学歴の割合は、ほとんどの人が中卒か高卒です。
大卒の割合は概ね7%程度で10人に1人もいません。※「教養としてのヤクザ」より
大卒といえども中位から下位の大学が中心です。
六大学出身者がわずかに存在している程度で、東京大学出身のヤクザはまだ出現していないようです。
一般社会とは価値観が全く逆転しており、むしろ中卒の少年院あがりの方がヤクザとしての格は上になります。
部屋住み
暴力団に入団した後は、部屋住みという見習い期間があります。
部屋住みとは暴力団事務所に住み込んで電話番や賄いなど雑用をこなす期間で、新人教育の意味があります。
親分・兄貴分から怒られたり、24時間自由のない生活が息苦しかったりと、なかなか過酷な環境で相当数のヤクザ志望者が去っていきます。
ただ、最近ではヤクザの世界も深刻な人手不足ため、若手が忌み嫌う部屋住み制度を廃止して、組に入りやすく対応している所が多くなっているようです。
組長と盃を交わしてヤクザになる
組織に入った後に組長から認められれば、「親子盃」として盃を交わし、親子の関係を結ぶことになります。
この盃を交わせば、組長と自身の疑似親子関係が成立します。
入ったばかりの新人に対しては特別な場所は用意せず、事務所や組長の家などで簡素的に行われる事が多いようです。
ただ、最近では盃を交わすこと自体を省略する傾向にあり、全体の半数以上は「親子盃」を経験していません。
※暴力団 溝口敦著
ヤクザはほとんどが少年院・刑務所を経験している
ヤクザ1000人に会いました!に少年院・刑務所の通算年数データがあります。
ない | 75人 | 12.1% |
1年未満 | 131人 | 21.1% |
1年~3年 | 148人 | 23.8% |
3年~5年 | 119人 | 19.2% |
5年~10年 | 55人 | 8.9% |
10年~20年 | 14人 | 2.2% |
20年~30年 | 17人 | 2.7% |
30年以上 | 26人 | 4.2% |
無回答 | 36人 | 5.8% |
刑務所や少年院に入ったことのない人は約12%。
視点を変えれば、約90%の人は刑務所や少年院を経験していることになります。
普通の人は、まず刑務所にお世話になることはありません。
暴力団が多くの犯罪者で構成されている事がわかるデータとなっています。
縁のない状態で押しかけてヤクザになれるのか
結論からいえば、「可能」でかつてはそういうケースもあったとのこと。
ただ、知り合いのツテではない分、見極めは慎重に行われます。
自分から暴力団に入りたいなんて、普通じゃない。
ぶっ飛んだ危ないヤツかもしれないので注意して扱う。
ただ、そういうヤツは直ぐに飛んでいなくなる。
女性はヤクザになることはできるのか
ヤクザの嫁や愛人であれば「姐さん」として一定の立場が認められますが、あくまでも男性ヤクザが前提で、女性が単独でヤクザ業界に入ることはできません。
組長である旦那が刑務所に収監された後に、後釜として「姐さん」組長を請け負った女性はかつて存在していました。
入れるかどうかはその組独自の基準でしか無いため、可能性としてはあるのかもしれませんが、基本的に受け入れる所は無いと考えて良いでしょう。
構成員と言うよりも、事務員や協力者といった形なら関係を持つ可能性はありますが、女性では「暴力」を使用することができないため、ヤクザとしての存在価値はほぼありません。
どんな人がやくざになるのか
暴力団に関する大規模な統計データは存在しないため明確な割合は不明ですが、ヤクザになりやすい人、なりやすい環境は存在します。
家庭環境について
一般的な幸せの形とされる「両親がいて健全に育てられた」ような人は、暴力団の世界にはほぼいません。
ほとんど人が母子家庭や父子家庭、両親がいない家庭、また両親がいたとしても機能不全など、いびつな家庭環境で育っています。
世界中の不幸を一手に背負ったような劣悪な環境で育てられた人も少なくありません。
◆親がいるが仕事をしない
◆日常的な虐待
◆家がない
最近では「普通の人も暴力団員になるようになった」といったような話もありますが、実際にはほとんどのヤクザが劣悪な環境の出身者です。
劣悪な環境で育ったために、社会への適応能力が育成できないまま大人になってしまい、就職も進学もできずに
「ヤクザにならざるを得なかった。それしか選択肢がなかった。」
という人も少なくありません。
ヤクザになった理由、きっかけ
絶対なりたいと思っていたから | 1人 | 0.2% |
ヤクザにあこがれていたから | 31人 |
5% |
楽ができると思ったから | 7人 |
1.1% |
いい暮らしがしたいと思ったから | 64人 |
10.3% |
かっこいいと思ったから | 47人 |
7.6% |
自分に向いていると思ったから | 66人 |
10.6% |
友人・知人に誘われて | 158人 |
25.4% |
成り行き | 95人 |
15.3% |
生活のため | 41人 |
6.6% |
刑務所でヤクザと知り合った | 39人 | 6.3% |
スカウト | 14人 | 2.3% |
ヤクザしか選択肢が無かった | 0人 | 0% |
無理やり勧誘された | 5人 | 0.8% |
どれも当てはまらない | 36人 | 5.8% |
無回答 | 17人 | 2.7% |
これらの統計データが取得された時期は2011年頃で、当局からの締め付けが現在よりもまだ緩い時代でした。
「成り行き」や「友人に誘われて」の割合が高く、ヤクザになる事を大きなことと考えていないことが伺えます。
「ヤクザしか選択肢がなかった」が0%と驚きの数字になっていますが、もともとの選択肢を提示した上でのアンケートであったため、理由のつけやすい他の選択肢を採用した人が多かったのかもしれません。
インターネットの発展によって、ヤクザの現実が容易に知れる様になっている現在では、おそらく「ヤクザに憧れて、かっこいいと思ったから」という選択肢は皆無に近いでしょう。
現在ではヤクザ映画はほぼ衰退していますが、昔は、高倉健や菅原文太の映画を見てヤクザを目指した人も多かったそうです。
ヤクザの父親の職業
鈴木智彦著ヤクザ1000人に会いました!には多様な統計データが掲載されていますが、「実父の職業はなんですか?」という興味深い統計がありました。
もちろん実父とは自身の産みの親のことを指します。
実父の職業はなんですか?
サラリーマン | 19人 | 9.2% |
公務員 | 11人 | 5.3% |
教師 | 3人 | 1.4% |
政治家 | 0人 | 0% |
警察官 | 2人 | 1.0% |
ヤクザ | 26人 | 12.6% |
商店 | 14人 | 6.8% |
自営業 | 11人 | 5.3% |
会社役員 | 5人 | 2.4% |
飲食店勤務・経営・バーテンダー | 4人 | 1.9% |
軍人・自衛官 | 9人 | 4.3% |
職人・土木建築業・日雇労働者 |
24人 | 11.6% |
サービス業 | 6人 | 2.9% |
農業漁業従事者 | 23人 | 11.1% |
トラック・タクシー運転手 | 5人 | 2.4% |
専門職 | 1人 | 0.5% |
どれにもあてはまらない | 7人 | 3.4% |
無職 | 17人 | 8.2% |
わからない | 4人 | 1.9% |
父親と全く面識がない | 8人 | 3.9% |
無回答 | 8人 | 3.9% |
この質問は生まれ育った環境を父親の職業を通して調査するために行われました。
一般人であれば、サラリーマンの割合が高くなるのが通常ですが、ヤクザに限定すれば公務員を合わせても15%程度しかいません。
また、親の職業がヤクザや土方、父親と全く面識がない、無職の割合が高くなっており、この数字だけでも「普通でない」環境で育てられた人が多い事が読み取れます。