ヤクザの象徴とされる刺青。
忌み嫌われる存在として、銭湯などの公共施設では刺青がある人は入場禁止となっている所がほとんどです。
服を着ている限りは見えない上に、日常生活に支障をきたす事が確実であるのに、なぜヤクザは刺青を入れるのでしょうか?
ヤクザと刺青の不思議な関係について解説をします。
ちなみに「いれずみ」にも刺青と入れ墨の2つの漢字がありますが、どちらも意味に違いはありません。
どうしてヤクザは刺青を入れるのか
ヤクザが入れ墨を入れる理由は細かく言えば人それぞれとなってしまいますが、大きく分けると3つの理由があります。
◆他者への威嚇・憧れのため
◆刑務所でいじめられないように
ヤクザとしての覚悟を決めるため
最近ではファッションタトゥーなども増えてきましたが、まだまだ日本においては、
刺青=ヤクザ・暴力団員(アウトローの人材)
という、関係が成り立ちます。
ヤクザとして極道の世界に足を踏み入れる決意表明としての意味があります。
他者への威嚇・憧れ
ヤクザは犯罪行為さえ厭わない暴力を背景に経済活動を行う職業です。
自身をより強大・凶悪に魅せれば魅せるほど、すべての事柄がうまくいくようになっており、その効果を期待して刺青を入れる人もいます。
そもそも、アウトローの人材は「刺青が格好良い」と考える人が多く、ひとつの憧れを持っている人が多いようです。
刑務所でいじめられないように
ヤクザである以上、懲役は必ず付いてくるため、刑務所に収監された時に舐められないようにと刺青を入れる人もいます。
刑務所内ではいじめが蔓延しており、身体の小さい人、弱そうな人、シャバでの地位が低い人(悪人度)が対象になりやすい実情があるのです。
刑務所内でのヒエラルキーはヤクザが頂点ですが、暴力団員であることを証明するため、他の受刑者から一目置かれる存在になるべく良い彫り物を装備しておく人もいます。
また、ヤクザといっても刑務所内では証明する手段がないため、自身の地位を高めるために「俺は~組の暴力団員だ」嘘をつく受刑者もいます。
どこで入れるのか
たいていの暴力団ではその組が親身にしている彫師が存在します。
希望者はそこで刺青を入れることが多いようです。
ほとんどのヤクザがそもそも「アウトロー」の出身ですから、彫師の知り合いには事欠きません。
どんな柄を入れるのか
ヤクザが入れる刺青は基本的に和彫です。
「和彫り」とは龍や虎、鬼、蛇、浮世絵、昔の人物など日本を象徴する和の図柄を、伝統的な手法で表現された刺青を指します。
対してマリア像や英語文字などの図柄をいれる「洋彫り(タトゥー)」がありますが、ヤクザの刺青としてはあまり採用されることはありません。
ただ、若いヤクザほど和彫り、洋彫りの区別はなく、オシャレ感覚で刺青を入れる人が多くなっているようです。
痛みはどのくらいなのか
刺青は針を差し込んでインクを注入します。
痛みが軽減する針は無く、単純に針を突き刺される痛みを常に感じながら、ひとつひとつ形にしていきます。
実際に体験してみると体の部分によっては相当な痛みがあり、痛みに耐えきれず彫っている途中で施術を辞めてしまうヤクザもいます。
ヤクザはすべての人が刺青を入れているのか?
結論から言えば、「入れていません」
組長・幹部クラスでも刺青が好きではない人は、刺青を一切施していない人もいます。
有名な例では、4代目山口組組長竹中正久氏も刺青を入れていません。
現在では安全な施術やインクが開発されたため、刺青をしたとしても大きな体調の変化はありませんが、かつては劣悪な施術と重金属が含まれたインクのせいで刺青を入れた人は内臓系の病気や感染症にかかりやすいと言われていました。
実際、昭和のヤクザの世界では全身に刺青を施したヤクザほど短命になりやすかったそうです。